ここ数年、私は北関東へのプチ旅行にハマっています。
東京から日帰り・1泊で出かけられて、素朴だけどおいしい食べ物もいっぱい!
特別張り切って出かける旅行というよりも、日常のほんの少し先にある“旅”ができます。
この日は、栃木県の益子町に行ってみることにしました。
はじめての益子の町

益子町にある「道の駅ましこ」で休憩と買い物をしていると、益子焼の作家さんによる素敵な器がずらりと並んでいました。

「これはじっくり焼き物も見てみたいな」と思い、益子焼の店がたくさん並ぶストリート 城内坂通りへと移動。
歩きながら、いろんな器を眺めていきます。
なぜ、焼き物文化は発展したの?気になった
たくさんの焼き物店が並ぶ城内坂通りを歩いていて、ふと気になったこと。
それは「そもそも“〇〇焼き”って、どうやって発展してきたんだろう?」という基本的な疑問でした。
先日、noteに書いた六本木のラーメンどんぶり展でも、現代の日本で使われているラーメンどんぶりの約90%が美濃焼(岐阜)という情報がありました。
日本には、美濃焼、益子焼、九谷焼(石川)、備前焼(岡山)、信楽焼(滋賀)など、焼き物が発展した地域が各地にありますよね。
でも、それらのエリアでなぜ焼き物文化が育ったのか、ちゃんと考えたことがなかったので、自分なりに理由を3つまとめてみました。
土がよかった(=原料が豊富)
焼き物はまず「土」が大事ですよね。
つまり、焼き物に適した良質な土がたくさん採れる地域は、自然と焼き物文化が発展しやすかったのではないかと思います。
地理と物流の利便性
その土地で作られた器は、当然ながら各地に運ばれる必要があります。
川や港、街道に近い場所は輸送がしやすく、商売としても育ちやすい。
たとえば、美濃焼は木曽川流域、有田焼は平戸・長崎港、瀬戸焼は名古屋経由で全国に広がりました。
「運べる=売れる」、この構図が焼き物文化を支えていたのだと感じます。
権力や文化の後押し(お城や茶の湯)
焼き物の世界でも、文化人やお城の影響は大きかったようです。
大名や武将が職人を庇護したり、千利休や織部のような茶人の好みで新しい焼き物が生まれたり。
萩焼(山口)は毛利家の庇護を、有田焼(佐賀)は鍋島藩の支援を受け、オランダへの輸出なども行われていました。
つまり、
良い土があって、運びやすくて、文化人や時の権力者が「その器いいね!」と推した場所に、焼き物文化は花開いた。そんな風に感じました。
じゃあ益子焼の発展の背景は?
益子焼は、華やかな歴史の舞台で高値でやり取りされた器というよりも、生活に根ざした「実用陶器」として育ちました。
江戸末期〜明治にかけては、農家向けの壺・鉢・火鉢・甕(かめ)など、大ぶりで実用的な器が大量に作られていたのだそうです。
飾り気のない日用品で、「手に入りやすくて丈夫」「どこの家にもある」そんな庶民の器だったといわれています。
民藝運動によって芸術へ
そんな益子焼を“芸術”へと押し上げたのが、柳宗悦・濱田庄司らによる民藝運動です。
1920年代以降、益子の焼き物が「民藝(民衆的工芸)」として再評価され、職人の手から生まれた日常の生活道具の中には、美術品に負けない美しさがあることが見出されていきます。
濱田庄司は益子に工房を構え、自ら作陶を続けながら地域全体に大きな影響を与えます。
ここから、「使うための器」から「使いながら愛でる器」へと進化していきます。
益子には暮らしとアートが息づいています
実際に行ってみると、益子町は“日本の農村”を思わせる、ホッとするようなのどかな地域でした。
特別な地理的な利点があるとは言いづらく、物流の整備によって発展したというよりも、「作り手の自由な創作活動の場」として選ばれた町なのではと感じました。
現代の益子焼は、伝統の技法にとらわれすぎずに、自由で作家の個性を感じられる器を生み出す場所へと変化しています。
まさに「アートとしての器」の広がりを体現している場所です。
初めて訪れましたが、生活と創造が自然に混ざり合っていて、静かだけど作家のエネルギーに満ちた益子町がとても好きになりました。
私が買った益子焼はこれ

小さな小さなスプーンは、毎日作るおにぎりに使う塩をすくう匙として購入しました。
ぽってりとした厚みと、無骨だけどあたたかい。いつものおにぎりがおいしくなりそう。

もうひとつは、納豆用の器。
塩で味付けした納豆を入れておいて、朝・昼・夜、好きなときに好きなだけすくって食べたくて、ちょうど専用の器が欲しかったところでした。
お椀よりも少し大きいサイズ、注ぎ口、手にしっくりなじむ重さも気に入っています。
どちらもとても気に入って購入したものですが、飾って眺めるようなアート作品ではなく、「塩をすくうスプーン」「納豆のための器」として、暮らしの中で日常的に使えることも益子焼の魅力です。
次は、秋の陶器市にお邪魔したいと思いまーす!
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